始まりの音

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「よぉ。ちょっくら金貸してくれんか?」 言い、ニヤリと笑う。 このチンピラは、いつもいつも飽きもせず同じ事を…。 相当、暇なのか? いつもの僕なら 「は…はい。」 俯きながら震える手で金を渡しただろう。 だけど今日の僕は、いつもの僕とは違う。 僕はチンピラを睨んで 「嫌だ。」 キッパリと言った。 するとチンピラは一瞬不可解な顔をしたが、見る見るうちに般若(はんにゃ)の様に目を吊り上げ眉間に皺を寄せて 「はぁ?今なんて言った?」 僕の言った言葉を聞き返す。 そんなチンピラに 「だから、嫌って言ったんだよ!!」 睨み言った。 途端、チンピラの右ストレートパンチが僕の顔面にめり込む様にあたり 「ぐぁっ!!」 僕は吹っ飛んだ。 「てめぇがアホな事言うからだ。 さっさと金出しやがれ!!」 吹っ飛び倒れた僕の腹や背中を蹴る。 「…っ…ぐっ!嫌だ!!」 割れて壊れた、僕の眼鏡を握って僕は叫ぶ。 今日の僕は、いつもの僕とは違うから。 僕がこんな酷い目にあってるって言うのに、登校してる学生も会社に向かうサラリーマンも、誰一人として僕を助けようとする人間はいない。 毎日の事で、誰も僕を助けようとしてくれる人間が居ない事は解っていたけど、もしも今日…この時に誰かが助けてくれたら僕は、ある事を止めようって心に決めていたのに…。
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