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僕は顔についたチンピラの唾を袖(そで)で拭く。
この時期、皆半袖を着ているけど僕は長袖。
理由は、僕の右腕に消えない火傷の痕があるから。
これは僕が、まだ小学三年生の時に僕の家が放火のせいで焼けた時にうけたもので、この火事で僕の父さん母さん、じぃちゃんに妹が死んだ。
残ったのは、右腕に酷い火傷を負って泣き叫び苦しんでいた僕だけ。
あの凄まじい光景は、目を閉じると今の僕の瞼にもまだ残っていて、夜になると唸(うな)される事がある。
僕の生い立ちを知っていた男(僕は親友だと思ってた)が、僕が季節関係なく長袖を着ている理由は
"僕が放火をして家族を殺し、自らを怪しませない為に小学三年生の皺の少ない脳ミソで考えた結果、自分も火傷を負えばバレないんじゃないか?って、わざと火傷を負ったんだ。"
…そう言う解釈を勝手にし、クラスメートに僕の長袖の事を話したらしく、僕はイジメの対象となった。
ただ皆の注目を浴びたいと言う理由で、僕は利用されたのだ。
だから僕は、いつも独り。
しかも運悪く、僕の住んでる地域に僕の噂は広がっていて、僕を見る人の目は皆同じ冷たい目。
チンピラだって僕の噂を知っていて、僕から金を毎日の様に奪っているんだ。
「さてと…。」
僕は汚れたズボンをはたく。
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