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第1章、異世界から来た男
「天文官、聞こえているか?、天候が芳しくないのは、オダの気象兵器の為か?」
厚い雲が立ち込める凄まじい暴風雨の中、全身が黒く生物的な丸みを帯びた甲冑姿の機動兵器が虹色の排気を出しながら飛び続けていた。
「その声は源氏の所の御曹司か?、例のデカぶつは、その奥だ、そのまま突撃するんだな!!」
「御曹司ってのは止めてくれ。拙者にはミナモト=ホウガン=ジンクロウ=ヨシツネという諱があるんだ……」
機動兵器の操縦席の内でこの若い男は苦渋の表情を浮かべ目前の液晶画面を拳で叩いていた。
「まあまあ、落ち着けそう荒れるな」
ヨシツネをなだめる天文官のやり取りを遮るように、後部警戒装置の警告音が操縦席内を満たす。
「ぬうう、見つかった!!」
朱塗りの機体がヨシツネの背後に迫りつつあった。オダの赤揃え、通称、紅機甲兵。この世界で最強を意味する者達の称号だ。
「源氏の小わっぱめ、ここで打ち取ってくれるわ!」
朱塗りの紅機甲兵はヨシツネの黒い機体に追い付くと背中に装備された金属製の太刀を振り抜き襲い掛かった。
二機の機動兵器は、激しくもつれ合いながら厚い雲の中へと姿を消した。
「おい!?、御曹司ーっ、どうした!?、応答しろ、おい
……」
天文官の耳当てからは、低い雑音だけがひたすら漏れ続けていた……。
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