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「そろそろ」
ぼそり。
「うん?」
みしろは絵筆を弄ぶ手を止めず、また、倉本の方を見もせずに相槌を打った。
「そろそろ、川瀬教員が来る頃だ」
みしろは画布を適当になぞりながら、顔を上げて壁掛け時計を見た。
――十一時二十七分。
がらっと、勢いよく扉が開けられた。
「やぁやぁ! おはようお二人さん。……おや。もうこんにちはかなっ!」
無意味に大きな声が、小さな美術室に響く。
標準的な日本人の背丈に、ぼさぼさ頭。
痩せた肩に大きなボストンバックを抱えている。
――あぁ、煩い。
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