二、いない

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  「お腹空かないかい? ボクは空いた! 腹ペコだよ!」   無視されても気にせず、一人喋る川瀬。     ――心底、どうでもいい。     これでプロの彫刻家なのだから、世の中何か間違っている。   「今日も君達だけかなっ?」   川瀬はいつもならしない質問をした。 みしろは倉本の方を見たが、彼は相変わらず両眼を閉じたまま口も開こうとしない。     仕方がない。     みしろはため息をついた。   美術部の部員は五人。 二年生の田辺和徳、伊藤卓、鍵戸加里沙(カギト カリサ)、一年生の稲田巧、丸尾重利、以上の五名である。           ……誰の姿もないが。  
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