二、いない

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  「言ってたっけ、そんな事」     うん、と倉本は頷く。     鍵戸は何故か入部当初からみしろになついていて、色々と話し掛けてくる。   が、みしろは興味がなく、話を聞いていない場合が多い。   敢えて興味がない事を言う必要もないし、隠す必要もない。 みしろは大概の感情を態度や表情で表し、言葉では表現しない。   まぁ、こんなだから『無愛想』だの『無神経』だの言われる訳だけれど、性格だから仕方がない。   鍵戸はみしろのそんな態度や表情を気にせず、一方的に話しているだけなのだ。   基本的に無関心なみしろは、彼女が一生懸命何かを話していたなぁとは思うものの、具体的に何を話していたかは覚えていない。     だから鍵戸が柊の話をしていたなんて知らない。 そして当然ながら、なんの木が彫刻に向いてるかなんて知らない。  
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