二、いない

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  「何?」   黒い髪。 ひらひらと流れる長い前髪に隠された眼は、閉じられている。 185センチだったろうか。 何にせよ、背が高い事に変わりはない。       学ランの似合わない美少年。       「筆は口にくわえるものではないよ。また川瀬教員に指摘されるよ」   美少年は腕を組んでみしろの隣の白い壁に凭れていた。   そしてぼそぼそと聞き取り難い声でみしろに言う。   みしろは顔を顰めた。     「解ってるよ、倉本(クラモト)」     みしろは“在る方の”腕で口にくわえた絵筆を取り、窓辺から離れた。  
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