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ひらひらと、結んだ制服の左袖が揺れる。
篠原みしろには、左腕が“無い”。
生まれつきではない。
ある時期迄は在った。
ある時期から、無くなった。
それだけの事だ。
みしろは絵筆を弄びながら、真っ白い画布(キャンバス)の前に座った。
美少年――倉本とみしろは、美術部の元部員だ。
しかし、みしろは一度も作品を創った事がない。
乾いた絵筆で画布をがさがさとなぞる。
そもそも油絵(え)の才能など、みしろには無いのだ。
油絵に限らずどんな美の才能も。
みしろには無い。
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