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「石田1等兵 参りました」
石田はなぜ雲の上のような階級である池内大佐から呼ばれたのか分からなかったしただ命令されたままにするしかない
「入れ」
そう言われその理由すら解けないまま部屋の中に招かれた
石田は敬礼をして部屋に入る 奥には椅子に腰掛ける池内大佐の姿があった
「まぁ そう固くなるな お茶でも飲め」
大佐自ら石田にお茶を出してくれた 通常では有り得ない事だ
(こんな1等兵の自分を呼び出した上にお茶まで…なぜこのような事を…)
ますます理解できない
「お前…中居中尉を知っているな?」
石田は目を丸くした 中居中尉は石田の叔父にあたる人物だ 元々医者でありながら軍医になり石田よりずっと先にこの中国戦線に赴いている だがなぜ池内大佐は叔父を知っているのか…?
「はっ! 中居中尉は自分の叔父です」
それを聞いて池内はニコっと笑った
「ヤツは俺の昔からの友人だ ヤツに面倒見てくれと言われてわざわざ竹下中隊についてきたのだ まったく中尉が大佐をコキ使うとは軍隊を何だと思っているのだろうな」
その笑顔は中隊が出発する日の朝に見せた威厳ある大佐とは思えないほどだった
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