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「ふぁぁ……」
大きな欠伸をする。横でうるさい目覚まし時計を止め、博人は呆けながら辺りを見渡した。
「……ん?どこだここは」
見覚えのない部屋だった。思わず呟いてしまう。そこが自分の新しい部屋だと気付くのに数秒要した。
「ああ、引っ越したんだった」
ようやく覚醒してきた頭をがしがしと掻き回す。そうして、思い出した。
「……あ。今日から学校だ」
ふと、部屋の隅に目をやった。ブレザーが壁にかけてある。新しい制服だ。それを着込む。
カーテンを開けて朝の陽光を受け、博人は大きく伸びをした。時計を見ると、まだ十分に時間に余裕があった。
「ヒロくん!起きてる?」
階下から塔子の声が聞こえてきた。朝食が出来たのだろう。良い香りもする。
「ああ!今行くよ!」
博人は少し声を大きくして塔子に声をかけた。そして、すぐに階段を降りた。
新居は広かった。前の家よりも遥かに。一軒家だった事は同じだが、明らかに違う。そんな家だから、眠る前、博人は迷子になった。
「今日から学校ね」
茶碗にご飯を盛りつつ、塔子が言ってくる。
「ああ」
博人は塔子が渡してきた茶碗を受け取り、短く答えた。朝から多いな、と心中で呟いた。
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