プロローグ

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張り詰めた空気が辺りを支配している。だが、これが気持ちいいのだ。 相手を見据える。剣道用の防具に身を包み、手にはカーボン竹刀。じりじりとこちらに寄ってくる。俺も負けじと自分の竹刀で相手を牽制する。 周りからはなにも聞こえない。後ろで仲間が応援していると思うけど、なにも聞こえない。これは単に、剣道の試合では応援は拍手のみと決まっているからだ。 「やぁーっ!」 相手が一際大きな声をあげた。 来る! 咄嗟にそう思ったが―― 一年前、俺は大事なモノを失った。それは二度と戻らない。 俺は、剣を捨てた。
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