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いつも一緒に遊んだ。どんな時も助け合った。そんな仲間。
「……秋仁?」
博人は呟いた。その瞬間、ロン毛は不機嫌そうな顔から一転。ワイルドな笑みを浮かべた。
「んだよ!覚えてんじゃねえか!落ち込ませやがって!」
ロン毛はまた肩を組んできた。その様子で、博人は完全にこの男を思い出せた。
深海秋仁。よく一緒にいたずらした幼馴染みだ。小さい時から腕っ節が強く、年上にだって負けなかった。それはさっきファンクラブの男をしりぞけた腕前から、今も変わっていないのだろう。
「いやあ、本当に久しぶりだな」
肩を組み返して、博人。実に嬉しそうに笑った。
「お前が五歳ん時に引っ越してったから、十二年振りぐらいか。でかくなったな」
秋仁も嬉しそうに笑った。身長が博人と変わらないくらいなので、肩組みも苦労はしていない。
「お前だってでかくなってるじゃねえか」
「ははっ!当たり前だけどな」
「そうだな」
「あっはははは!」
「ははは!」
しばらく二人で笑い合っていた。
「んで、どうして戻ってきたんだ?」
あれから笑いが治まった頃、一路学校へ。その途中、これまでの経緯をお互いに報告し合った。秋仁は今、バレーをしているそうだ。一年でレギュラーをとったらしい。これからは二年だから、一層気合いを入れていく方針だとか。
「母親の転勤でな。引っ越してきたんだ」
「へえ。転勤か。大変だな。向こうの高校の友達とかもいたんだろ?」
「あ、ああ。いたよ」
博人の口調はどこか歯切れが悪い。あまり前の高校の話題には触れたくないのだ。
そんな博人の様子にいち早く気付いた秋仁は、話題を変える事にした。
「ま、ここでは俺がいて良かったなって話だよな」
「そうだな。本当、さっきは助かったよ」
「おいおい。もういいって。親友として、助けるのは当たり前だろ」
びっ、と親指で自分を指す秋仁は、どこか自信に満ち溢れている。かなり頼りがいがあるな、と博人は嬉しくなった。
「これからもピンチの時には昔みたいに助け合おうぜ」
だから、そう言えた。秋仁は当然とばかりに、
「おう!」
と言って、満面の笑みを浮かべた。
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