獄寺的クライシス

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尻が地に付いたような衝撃があり、獄寺は恐る恐る目を開けた。 「なっ」 その途端、視界に飛び込んできた光景に、しばし唖然となる。 コンクリートの道路、住宅街… 今獄寺がいるところは、さっきまでの鬱蒼とした森ではなかった。 「…?」 目の前の家には見覚えがある。彼が右腕として仕え、守護している10代目である沢田綱吉の生家だ。 しかし何故自分はこんなところにいるのだろう… 「はっ…はひ…?」 「!」 獄寺が思案していると、後ろから聞き覚えのある女の声が聞こえ、獄寺は振り向く。 そこには、まだ14、5歳くらいの少女が驚き訳が分からないといった表情を浮かべて震えながら立っていた。 「あれ…獄寺さんが大人の男の人に…?何故ですか…?」 「!」 「お前…ハルか?」 「へっ…何で私の名前知ってるんですか…?」 この一連のやり取りで獄寺には合点がいった。 獄寺は10年前の自分と入れ替わり、10年前の日本に来てしまったのだ。 (あんのアホ牛…) 恐らく原因は沢田と同じくランボの10年バズーカだろう。どうせまた誤射したのに違いない。 (くそ…一番肝心なことを伝えられなかったぜ…) 一番大事なことを言おうとした瞬間に飛ばされた。今頃沢田は10年前の自分と一緒に途方にくれていることだろう。 実際は、10年後に飛んだ二人はとりあえず生八ツ橋を食べているのだが。 (ああ~10代目!…と10年前のオレ!) 獄寺は心配で心配でどうしようもなくなり、気紛らわせに髪を掻きあげた。 今はまだ昼間だからいいが、あそこらへんは夜は注意しないと危ないのだ。リングを身に着けていれば尚のこと。 (誰か味方に会えるといいんだが…) 「あの…?」 (まずこいつをどうにかしねーと) 10年バズーカの存在を知らないハルは厄介だった。 どう説明したことか…。自分が10年後の世界から来たと明かし、10年バズーカのことを口に出したところでハルがすんなりと事態を飲み込むとは思えなかった。 それに別に説明しなくとももうすぐ5分が― (5分…?) 獄寺の感覚からして、既に刻限の5分は経っていると思われた。  
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