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私は急いで腰をあげて、小さな声で発砲スチロール越しの瞬くんに謝った。
「ご、ごめんね。瞬くん。もう戻らなきゃ……、ばいばいっ!」
お話できて、すごく嬉しかったよ。
ママに気付かれないよう出来る限りの小さな声で、別れの挨拶を言った。
「うん。真由ちゃん、またね」
ベランダの窓を開けた時、さっきまで吹いていた風が、止んだ気がした。
「またね」
違う。
「ばいばい」じゃない。
別れの挨拶じゃない。
「またね」は、
また次に会う、約束。
目の前に見えた日常という名の地獄に戻る前、それは確かに私の耳に届いた。
瞬くんのあの声が、
瞬くんのあの一言が、
私に大きな
希望と勇気をくれた。
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