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はっと目が覚めた。先程までみていたのは夢‥。
ここ最近、見るようになった。深い深い霧の中で男が俺の身体を抱きながら泣くのだ。
すまない、と。
それはあまりにも悲しそうな声音で。瞳からは涙が伝っていて‥
それを見て俺は思うのだ。
泣かないで、謝るのは俺の方だ。
「ったく、勘弁してくれよ」
溜め息混じりでそう呟く。胸には悲しみしかなくて、どうしてもやり切れない。
目を片手で覆い隠して、力無く首を左右に振る。瞼には濡れた感触
またか、と思い再度溜め息を吐く
どれだけ感情移入してるんだよ。
暫くそうしていると携帯の着信が鳴り響き、俺は肩を震わせ慌てながら携帯を探した。
ベットサイドにあったその携帯を手に取り、サイド画面に表示された名前と時間にヤバいと瞬時に思ったが、落ち着いた風を装い携帯を耳に当て通話ボタンを押した。
「はい」
「はい、じゃねぇだろ?クソ朔日。今何時で今日は何の日かをその無い頭で思い出せ」
出た瞬間に吐き出された罵倒の言葉に思わず苦笑を漏らした。忘れた訳では無いのだが、今彼に言っても無駄だろう。
因みに朔日(さくひ)と言うのは俺で、宮島朔日と言う。そこそこ売れているバンドのそこそこな腕前のヴォーカルである。
「悪い、朔夜。忘れてた訳じゃないんけどな‥寝坊した」
「‥‥。15分で来い」
「あっ!!!コラ‥って切りやがった」
ついでに荒々しく終話ボタンを押した彼は宮島朔夜。俺の双子の弟である。
普段は俺とは違い、口調も柔らかく愛らしいのだがキレるとこうなる。俺限定だがな。
ちくしょう、と呟いて俺は携帯を置いてベットから起き上がった。取り敢えずシャワーでも浴びようか
悪いが15分はムリだなァ、なんて考えながら欠伸をかみ殺し。
今日と言う日を思い出す。今日は俺と朔夜のbirthdayライヴ
さぁて、派手なパフォーマンスでもお見舞いしますかね
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