第一章‐1“レイヴン家令嬢誘拐事件―すれ違い―”

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▼ ローザス王国第三の都市、レギオンはレギール川の河口の両岸に広がる港都市である。 街を囲む城壁はレギール川をも含み、堅固と重層感を訪れるものに訴える。 川を横切るそれは半径15メートルの極太の石柱に支えられ、石柱と石柱の間には半永久的な感知魔法を張り魔物の侵入を防いでいる。(石柱と石柱の間は約100メートルの長さがあり、石柱は8つある) レギオンは港都市であるとともに橋の街でもある。 至るところに掛けられた石橋は、川に突き当たった道を余すところなく対岸まで導く。 また、3箇所ある中洲へは最も多く人が行き来し、橋を掛ける距離が短いこともあって様々な趣向を凝らした橋が見受けられる。 だがやはり橋だけでは許容量を越える人の往来があるため、本来港でもあることもあり魔動力船も活発である。 もっとも今は静寂。 があたりを支配し時折聞こえる鉋槌(カンナヅチ)の音が人の活動を知らせるのみだが。 デルスは再び愛馬「ヨクラシム」に股がり軽快な音を響かせている。 カシオスはエメラルドグリーンの美羽を広げ遥か高くへと舞い上がっている。 彼らが渡っている橋は「レインボーマーチ」と言って、外壁の内周に沿って作られた道、名を「マーシャルマーチ」、いざと言うときの兵の移動手段として整備されてもいる道の一部である。 そのため道幅がそこらの道よりも広く、石造りの道は綺麗でもある。 だからまるで無人のメインストリートを駆けているような感覚に捉われる。
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