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今、レギオンの街を囲う外壁へと疾走する影がある。朝靄(アサギリ)がうっすら霞む暁時(アカツキドキ)に軽快な4つの足音をたてて彼らは駆けて行く。
いや、もう一つ、馬を駆る彼の上空に曙の光を受けて尚、エメラルドグリーンに輝く雉ぐらいの鳥が滑空している。
――と、軽快に踏まれていたリズムが徐々にテンポを落としてゆき、ついには八つの門のうちの一つに到達した。
「何者だ。」
中年の体格のいい、おそらく騎士団と思わせる銀色の鎧を着た門番は警戒しつつ尋ねた。
当然だろう、騎乗の男は黒に近い紺のコートで身を包み、尚且つフードで顔が見えない。
怪しい者だと疑われてもしかたない姿をしている。
「仕事だ。」
声色からして17ぐらいの青年だろうか。
青年は無愛想に言い放ち、年に見合わぬ慣れた態度で門番に通行証と思われる長方形の金属を差し出した。
しかめっ面で確認した門番は四角い枠の中に「黄金の鎧と小麦色の毛を身につけた雄々しい雄鹿」を見て唸ってしまった。
「…通れ。」
あからさまに不機嫌な顔をして渋々通行を許可した。
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