第一章‐1“レイヴン家令嬢誘拐事件―すれ違い―”

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「急ぎでな。」 馬から飛び降り青年は、手綱を引き出した。 まだ、いかにも怪しく、正規の、しかも「王のお墨付きの通行証」を何故?持っているのか納得いかない門番は胡散臭そうに彼を眺めている。 仮に通行証が普通のものだったら、門番は迷いなく門前払いにしただろう。 しかし、王のお墨付き、つまりローザス王国国王印がついていたらそう思い通りはいかない。 なにせかの王印は世界で唯一、ローザス王だけが所持し、大地と天空の精霊の加護を受けているため大魔導士でさえ複製、模写等の捏造が出来ない神聖なものなのだ。 王自身も滅多に押印を許可しなく、つねに持ち歩いているらしい。よっぽど信頼を得た人物でなければ個人のためになにか許可をするはずが無いしろものである。 そう、目の前を通り過ぎる怪しい青年は王のお気に入り中のお気に入り。自分がとやかく言える人物では無いのだ。 逆にたてつけば自分の首が、危うい。 門番は2、3年ここに勤めている。だが、このような怪しいVIPは初めてだ。 当然、王印持ちも。
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