第一章‐1“レイヴン家令嬢誘拐事件―すれ違い―”

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青年が馬を引き立て門番の横を過ぎ去ろうとした時、 -バサバサバサッ! 「ッ…。」 門番はすかさず音のした方、青年に槍を構えた。 ヒヒーンン!!! 突然の臨戦態勢に後ろ足で立ちに門番を警戒するが、青年が素早く修めた。 「ドウドウ…すまない。 使い魔だ。」 見ると、男の肩にエメラルドグリーンの艶やかな羽毛の鳥。が羽を落ち着かせている。 「使い魔…。」 一般的に魔法使いは、召喚魔法に類する特殊な魔法陣を介して幻獣界に繋ぎ、自らの実力と性質のあった幻獣と契約する。 これを「契約の儀」と呼び、契約を結んだ幻獣のことを自らの「ディンゴ」と称す。 幻獣は契約主から名前を授けられ、どんな狂暴な者もそれに拘束される。 逆に契約主は体の一部に契約印が刻まれ、精神への介入を許す。 そう、彼らは対等な関係で結ばれるのだ。 だが契約する際、相手の幻獣に認められるための何らかの行為があり、それを経ているため若干契約主の方が優位にあり、「契約主>幻獣」という関係が成り立つ。 ところで、「契約の儀」と似て非なるものが「使い魔」である。 「使い魔」は幻獣界ではなくこの世界、エラ・カルンデの魔物や動物を魔法使いが使役する際の使役される生物の総称である。 彼らと魔法使いの関係は多種多様であるが、一般的に魔法使いが魔力で調伏させる。だが、強力なものや知能が高いものとはお互いの信頼関係の上で成り立っているとされる。 使い魔ともやはり『契約する』といい、その主従関係や信頼関係が成り立った時点で契約の成立が認められる。
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