第一章‐1“レイヴン家令嬢誘拐事件―すれ違い―”

6/9
前へ
/20ページ
次へ
門番は雉より少し大きい美しい鳥を眺めてみた。 黒いつぶらな瞳にはどうしても知性を感じられずにはいられない。 エメラルドグリーンの鶏冠(トサカ)を含め、いるだけで彼?彼女?の存在感と気品に飲まれそうになる。 威風堂々、その姿形の特徴は一 「ああ、分かった。それにしても綺麗な鳥だな。不死鳥か?だとしたら色が違うようだが…」 警戒の構えは自然と解かれていた。 王が気に入るだけの人物だ、実力もそれ相応のものなのだろう。 彼が強力な使い魔を持っていたってなんの不思議もない。それに、ちゃんと制御出来ているだろう。 すると、青年はひどく意外そうに言った。 「ほぉう。よく知ってるな。…あながち間違いではないが、こいつはフェニックスの親戚みたいなものだ。遥か遠く東のリャーヤ大陸出身らしい。 あんた無愛想に見えるが、話しやすいな。つい要らぬ事まで話してしまった。」 無愛想とは甚だ心外だ。話しやすいとは言われた事がないが… 「余計なお世話だ!ははっ! 東のリャーヤ大陸か…西の最果てミシヨルドとまでは行かないがレギオンもなかなかの遠方の地だ。 さぞかし長い旅路を経てきたんだろう。 ゆっくりその羽を休めてくれ。 レギオン名物、取れたてで新鮮なカジルを疲れを癒すとされるオーラムで包んで煮る「カジルのオーラム包み」も是非食べてくれ。旅の疲れを一息に吹き飛ばしてくれるぞ。 そういえば急ぎだったな。すまない。無愛想な奴だと思っていたが案外話しやすかったもんでな。」 クキュルルルゥ 不死鳥の親戚から美しい旋律が高らかに告げられた。 「ほう、貴男の紹介にあずかろうだとさ。 俺も食べてみよう、「カジルのオーラム包み」とやらを。 では行かせてもらおう。 また、お前とは会いたいものだ。 俺の名はデルス。 あんたは?」 「ライアン! 私もだ。また君と何処かで会えればと思う。」 この時間帯は小門しか開いていない。 一際目立つ光る緑が肩に着いた紺の影は、栗色を横に従えたまま朝靄(アサモヤ)に消えた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加