初恋

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「由衣」 私を呼ぶ声が聞こえ、ふっと我に帰る。 「聡志。」 薄暗い暗闇の中、私は聡志の腕の中に居たことをふと、思い出す。 「うなされてたよ?大丈夫か?」 「…うん…。 いやな夢、見た…。」 そう言って、私は聡志の胸へと体を預ける。 何も言わず、聡志は私を抱き締める。 そうして、私はようやく安心して眠りにつける。 聡志の体は、私の安眠剤のようなものだ。 聡志とは、大学のサークルで知り合い、ちゃんと付き合っていたら一年を間もなく迎える。 私にとっては、始めての彼氏だった。 けど、聡志にとっては何人目かの女。 ただ私が、その事を気にして聡志を信じきれなくて、私たちは終わった。 けど、私は聡志の体から離れきれなかった。 「別れてもずっと友達でいよう」 そんな言葉で繋がれた、私達の関係。 暇さえあれば聡志の部屋に来て、恋人のように過ごし、恋人のように笑いあい、そして恋人のようにセックスをする。 それが終われば、名前を呼ばれ、抱き締められながら眠る。 私は、聡志といると最高の安堵を覚える…。 愛されている実感。 満たされている実感。 ぐっすりと眠れる。 けど… 『ソレデイイノ?』 いつも、誰かが囁いてる…。
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