0002 渋谷 サチ

13/19
前へ
/1861ページ
次へ
──それからウチは仕事を上がり、朝方にザコ、その男の家にいた。 メアドと番号を交換し、彼の指定した彼の家に来たんだ。 多分七畳くらいの1K。ウチの部屋より遥かに狭い。部屋はわりとキレイやけど、灰皿には大量の吸い殻。 男の名前は港 タキオ20歳。自分とタメだった。 さっきからタバコを吸いながら、ずっと本を読んでいる。本というか、説明書? 携帯電話を買った時に付いてくる、ぶ厚い説明書みたいな。 ウチは布団からタキオの様子を見ていた。裸で。 3発うたれた。 この部屋寒い。あたしはせめて下着だけでもと思って、パンツを探した。 「まだ着るな」 タキオの言葉に、ウチは布団に戻り、謝る。 「ごめんなさい」 自分なりになんとなく分かってる。 ウチはこの人に逆らえん。 どう例えたらいいんだろ。 小さい頃、ものすごく怒っている父親の言うことを泣きながら聞いた。そんな恐怖でもあり。 バイト先ですごく尊敬していた店長。彼に指示されたことを、うまくこなしたいと思う緊張感。そんな尊敬でもあり。 愛しくて可愛いダメな彼氏の為に、何かしてあげたい。ウチがいなきゃいけん。そんな奉仕でもある。 今の感情はそのすべて。 うまく言えんけど、恐怖と尊敬と奉仕、さらに緊張。 そこから愛を抜く。  
/1861ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219918人が本棚に入れています
本棚に追加