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そう、この男。タキオの前だと無条件に緊張するんよ。
ただ、記憶や感情はあまり変わらない。言うことは聞くけど、好きじゃない。
むしろ相変わらずの嫌悪感がある。
「はは すげえ これ すげえ!」
タキオは説明書を一通り読み終わると、そう言いながらウチに近づく。
「お前 俺の奴隷なんだ!」
「はい たぶん」
ウチは訳分からないけど、とにかくうなずいた。タキオは布団の上に来ると、ウチに顔を近付けて言う。
「口開けろ」
ウチは黙ってアーンと口を開ける。
「はは お前が着けてたんだな」
タキオはウチの口の中に指を入れ、目で覗き込みながら上の歯の裏にある矯正器具を確認した。
「おぇ」
ウチがえずくと、タキオは「ははは」と笑いながらまたタバコを吸う。
普段だったら、ブチ切れて帰るし、怒りの感情もあるが、何も言えん。彼に不快な思いをさせてはいけんと、何か衝動みたいなものが働く。
「訳が分からないだろ」
「はい」
訳が分からん。
「ナントカサチだっけ?お前説明書読まなかったのか?」
渋谷じゃボケ。名字くらい覚ええや。
「はい」
「読まずにこんなもん口に入れたのか?」
「はい」
「お前 バカだな」
お前もな。
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