0003 杉並 ルシエ

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2月の寒い深夜。 そいつの車で、山ん中のトンネルの心霊スポットを見に行ったんだけど、山に入った道の狭い空き地に車を止められた。 そして、まず告られた。 まだ会って数時間だったから、引いたけどなるべく柔らかく断った。 けどそいつはそこから「キスがしたい」「6年も彼女がいないから溜まっている」など、下ネタとセクハラを話す様になった。 あたしが「怖いから家に 帰して」と言っても、そいつは変に優しい感じで帰そうとしない。 会話の流れは今でも覚えてる。まだ会う前に、そいつのことを「紳士的だしおもしろいよ」と、あたしが社交辞令程度に褒めた事を言ってきた。 更に、あたしが言った好きな男のタイプが「常識あっておもしろい人が好きと言ったじゃないか」など、どうやら自分があたしの好みで、イコールあたしが自分に惚れていると思い込んでいたらしくてさあ。 そんなことを言われても、そいつはあたしが好きなタイプの、おもしろい常識人ではなかった。 あたしも段々口数が少なくなり、頭の中ではどこまで山を下ればタクシーを拾えるか、通りすがりの車にヒッチハイクできるかなど、割とのん気に考えていた。  
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