0001 港 タキオ

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すれ違った女の妄想に浸っていると、突然目の前が真っ暗になった。 毛布にぶつかった様な、ボフッとした衝撃。 何が起きたのか、一瞬じゃ分からなかった。 「うお どうした?」 その男は振り向き様、そう言ってきた。 その言葉でやっと理解したんだ。 どうやら僕はボーッとして、この男の背中にぶつかったらしい。 「あ…いや…すみません」 僕は乙女みたいに小さな声と早口で謝った。 歳は同じくらいだが、身長は僕より高く体も大きい。 何よりライオンみたいに爆発した髪。 男はそのまま何も言わず、前を歩いて行った。 けど、この一瞬の出来事で僕はくやしくなった。 ライオンみたいな男の風貌にビビった。 ぶつかった自分の失敗に後ろめたさを感じ、恥じた。 結果、リスみたいな小声で僕は謝った。 僕はなんて、ちっぽけな人間なんだ。 1分前まで、すれ違った女の足を舐め回す妄想をしていたのに、今は地震が起きて、この小さな失敗がうやむやになればいいと思うほど恥ずかしい。 そんな憂鬱(ゆううつ)な気分のまま、友人と待ち合わせしていたコンビニの前に着いた。 友人はすでに到着し、店内で立ち読みをしている。  
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