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いつもなら居酒屋で少し飲んでからキャバクラに行くはずだが、その日は違った。
直接キャバクラに行こう。と友人は言い出したんだ。
おごってもらう身なので、違和感はあっても異存は無い。
結果、僕が行った事のないキャバクラへ行く事になった。
路面店であるその店は、その地域では高級な方のキャバクラだ。
おごりでもない限り、学生の僕は行けないハイグレード。
女の子がみんな芸能人の様に可愛いとか、ブスが1人もいないとか、居心地がいいとの噂だけはよく聞く。
場末の大抵の店の前にはボーイが客引きをしているが、この店はしていない様だ。
客にこびない様子から、客に困らないのだろうと思った。
店内に入った瞬間。
『 キュイ──ン 』
口の中の器具から歯を震わせる振動を感じた。目を麻痺させる暖光と共に。
振動は数秒で終わり、いらっしゃいませと言う、気取ったボーイの声で我に返る。
なんだ今のは。
生意気なクラシックが流れ、嗅いだ事の無い甘い香水の匂いが、僕の脳にキャバクラへ来たのだと実感させた。
振動も気になったが、気になるのをそのままに、景色と匂いへ夢中となる。
ボーイのご指名の方は?という問いに友人は意外な発言をした。
「ああ ジュリアちゃんいる?」
一瞬で理解した。
こいつは自分の目当てのキャバ嬢と会う為に、僕を誘ったのか。
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