0001 港 タキオ

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いつもなら居酒屋で少し飲んでからキャバクラに行くはずだが、その日は違った。 直接キャバクラに行こう。と友人は言い出したんだ。 おごってもらう身なので、違和感はあっても異存は無い。 結果、僕が行った事のないキャバクラへ行く事になった。 路面店であるその店は、その地域では高級な方のキャバクラだ。 おごりでもない限り、学生の僕は行けないハイグレード。 女の子がみんな芸能人の様に可愛いとか、ブスが1人もいないとか、居心地がいいとの噂だけはよく聞く。 場末の大抵の店の前にはボーイが客引きをしているが、この店はしていない様だ。 客にこびない様子から、客に困らないのだろうと思った。 店内に入った瞬間。 『 キュイ──ン 』 口の中の器具から歯を震わせる振動を感じた。目を麻痺させる暖光と共に。 振動は数秒で終わり、いらっしゃいませと言う、気取ったボーイの声で我に返る。 なんだ今のは。 生意気なクラシックが流れ、嗅いだ事の無い甘い香水の匂いが、僕の脳にキャバクラへ来たのだと実感させた。 振動も気になったが、気になるのをそのままに、景色と匂いへ夢中となる。 ボーイのご指名の方は?という問いに友人は意外な発言をした。 「ああ ジュリアちゃんいる?」 一瞬で理解した。 こいつは自分の目当てのキャバ嬢と会う為に、僕を誘ったのか。  
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