月光円舞

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【7/1 12:40】  昼休みを告げる鐘が鳴り、教室は一瞬で騒がしくなる。催眠術みたいだ。 「顕護、飯食おう」 「ん」  俺は呼ばれるがままに、弁当を持って友人の席に行った。 「今日は何食わしてくれんの?」 「催促は自分の弁当を空にしてからにしろ」 「俺、早弁したからさ。もう半分しか残ってないんだわ」  そう言って笑いながら弁当を見せてくる。それは自業自得だろう。  バカな友人は放っておいて、俺は食事を始めた。  しばらく食べていて、食欲が急速に薄れる。それどころか軽い吐き気まで出てきた。 「どした?顔色悪いぞ?」 「いや…」  原因は分かってる。貧血だ。 「保健室行ってくる…これ食べていいぞ」 「おう…大丈夫か?」 「仮病で保健室に行ったことはない…」  俺は弁当を友人に渡し、軽くふらついた足取りで保健室へと向かった。  俺は別に病弱なわけでも、慢性的な貧血持ちでもない。この貧血は外的要因によるものだ。  簡単に言うと、『血を吸われすぎた』ということ。  保健室のドアを開ける。立っているのも辛いので、先生に一言 「貧血です」  そう言って、ベッドに倒れた。  何故『血を吸われる』のか。  蚊に吸われまくっても、こんなことにはならない。人間一人を貧血に追い込めるのなんて、吸血鬼ぐらいだ。  そう、吸血鬼。  俺の知り合いで吸血鬼は一人だけ。  ……昨日は敵にもアイツにも油断し過ぎた。 【7/1 0:24】 「──ふっ!」  溜めを作った突きで敵の額を貫く。  刃を引き抜きながら蹴り倒し、次へ。  街のほとんどが眠り、空気が固まる時間。  刃に月光を乗せ、走らせ続ける。  人影は二つ。その他は山ほど。  一向に尽きることを知らない人外。  一つ。また一つ。  一歩ごとに赤い飛沫(しぶき)を上げさせる。  しかし宴は終わりを見せず、ダンスはまだ続く。 「……ちっ」  少女のもとへ跳び寄る。 「さすがに数が多いわね…すごい入れ喰い状態」 「雑魚ばかり釣れても意味がないだろ」  さすがに10分も跳び回れば息も切れる。 「徹夜は御免だぞ」 「そうね…一つだけ一気に倒す方法があるわよ」 「本当か?だったら是非頼む」 「おっけー」  少女はおもむろに俺に抱きつき、そして── 「いっ──!?」  首筋に噛み付いた。
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