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目の奥がスパークする。
眼球が溶ける。
全身の肉が朽ちていく。
「が──あ──!」
少女が離れ、一気に疲労と目眩、その上吐き気まで襲ってきた。
「ぅ──ぐ…」
こんなところで吐いてたまるか。
何とか歯を食いしばって吐き気を堪える。それでもギリギリだというのに、トドメを刺すかのように…いや、事実敵にトドメを刺すために力を使ったわけだが。
少女が両手を掲げ、それを広げながら振り降ろすと、地揺れと同時に熱を持った血風(けっぷう)が衝撃波のように駆け抜けた。
辺りにいた人外は塵骸(じんがい)と成り果て、俺も地揺れと血風に後押しされ、無様にも胃の中のモノを吐き出していた。最悪だ…
「な、え、ちょっと!大丈夫!?」
大丈夫だったら吐いてない。
嘔吐が終わると、さらに疲労感が増してきて意識が保てなくなってきた。
「ねぇ、ちょっと!顔色悪過ぎだよ!?」
誰のせいだと思ってる。まったく…こういう事は…
「…先に言え、バカ…」
俺はそう言って意識を失った。
【7/1 13:00】
その後、気付けば自分の部屋で適当に敷かれた布団の上に横たわっていた。
「…はぁ」
思い出す度に自分の無様さに呆れる。
溜め息を吐き自己嫌悪に浸っていると、保健室のドアが開いた音がした。
「どうしたの?」
「草間君、居ますか?保健室に行ったって聞いたから様子見に来たんですけど…」
「草間君なら、そこのベッドで寝てるよ」
会話が終わると気配はこっちに近づいてくる。そしてカーテンを開け、中に入ってきた。
入ってきた人物は俺をこの状況に追い込んだ犯人『シオン=ルトワリエ』その人だ。
「…大丈夫?」
「…に見えるか?」
少しジト目でシオンを見る。何の断りもなく、全力で血液を抜き取られたんだ。これくらい文句は無いだろう。
「えっと…ごめん、なさい」
ずいぶんとしおらしくなっている。悪いことをした自覚はあるみたいだ。
「…次からは先に言ってくれ」
「…うん、ごめん」
「…もういいさ。気にするな」
我ながら甘いな。下手したら命に関わってたっていうのに。
自分の命より、こいつの笑顔が大事らしい。
…まぁ、一目惚れなんだから、どうしようもないわけだが。
「今日…大丈夫そう?」
何のことを聞いてるのかというと、昨日に引き続き『釣り』の話みたいだ。
答えはもちろん──
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