月光円舞

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「問題無い」  力を使うには血液が多く必要だ。それに加えて、こいつは戦い慣れてない。一人で無茶させたら人外の餌になることうけあい。 「…ホント?」 「本当だ。だいたいちょっと貧血がひどいからって、やめれるようなことじゃないだろ」  運が悪ければ、寝てたって襲われる。この世界はそんなものだ。 「…」  シオンはまだ心配そうに俺を見ている。 「…ふぅ。心配はしなくていい。時間はいつも通りでいいな?じゃあ俺は少し寝るから」  心配させ続けてたら、このまま延々とここに居そうだ。  早いとこ教室に戻ってもらうため、俺はシオンを無視して寝ることにした。  そういえば、気になっている人もいると思うので簡単に説明しておこう。  この学校に留学生はいない。では何故『シオン』なんて横文字の名前で怪しまれないのか。  答えは、集団幻覚の類だ。学校にいる人間の記憶を一部操作することによって、違和感を無くしている。要するに高等な魔術を使っているというわけだ。  これ以上の説明はややこしく面倒なので省略。じゃ、おやすみ。 【7/1 23:00】  大抵の人間は眠りにつき始める時間、俺はシオンと共に人気のない道を歩いていた。 「…うん、こっち側で合ってる。臭いが少しずつ強くなってる」  シオンはスンスンと音を立てながら臭いを確かめる。吸血鬼じゃなくて犬だな、これじゃ。  しばらくそれを繰り返しながら歩いていると、突然シオンが足を止めた。 「どうした?」 「…向かってきてる。一つ、二つ、三つ……七つ。来る!」  シオンが声を張り上げた直後、前方から四つ、頭上から三つ、何かが飛び出てきた。  正確には、飛びかかってきた。 「ちっ…!」  俺は前回り受け身の要領で回避しながら、左手に持っていた布で巻かれた小太刀を鞘から抜いた。  そして、前方から飛びかかってきた一体の腹にすれ違いざま、刃を突き立て裂いた。  そのまま体勢を立て直し、シオンの後ろまでバックステップ。 「大丈夫か!?」 「なんとか!そっちも無事みたいだね」  俺達は互いの無事を確認すると、取り囲むように陣形を構えた犬に似た魔物を見据えた。  ふと、俺の口から笑いが漏れた。 「…どうしたの?」 「いや…」  犬みたいに音を立てながら臭いを嗅いでいたら、犬の化け物が出て来たなんて── 「ちょっと滑稽でな」 「なにが?」 「こっちの話だ」
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