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樋山のそばにしゃがみこんだ宅間が棒立ちの私たちを振り返って見上げる。
「見るぞ」
そういう目で。
私は嫌だった。
当時からホラー映画の類は好きだったが……誤解しないでもらいたい、私が見たいものはドキドキハラハラのストーリーや殺人鬼だったりモンスターだったりそういうもので、血がドバーッとか臓物でろりんではない。
何が言いたいかというと、この時私は、リアルにそんなに血がドバドバでるケガをした事も見たこともないし、すごく嫌な予感がして、逃げ出したい一心だったのである。
宅間がかすかに震えながら、靴を脱がす。
途端にかかとの部分から赤い液体がしたたって、舗道の砂を黒く染めた。
ま、まじかよ~……呟きながら宅間が血に濡れた靴下を剥ぎ取る。
……足の甲に傷は無い。もっと上の方だ。
宅間がジャージの裾のジッパーを開き、動きを止める。
宅間だけではなかった。
負傷した樋山を含め、全員。
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