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いきなり鳴り出す携帯電話。
急いでみると、知らない番号。
取ろうとした瞬間、鳴り出す事務所の電話。
「はい…高梁万物派遣社」
こんな時に事務なんて…。仕方なく出ると聞こえて来たのは信じられない話だった。
『あ私、国立花澤病院の高槻と申します』
「あ、はい。高梁万物派遣社の派遣社員久御山です」
『そちらの社員で左海茜さんという方がいると思うのですが』
「………!!はい。左海茜は当社の社員ですが」
『よかった!社員証があったのでお電話かけさせていただきました』
「はい」
『実はですね。左海さん…事故に遭われて当病院に緊急で運ばれて……』
頭が真っ白になった。
は?
事故?
「高梁社長!ちょっと安東美鈴さんと田宮春さん…えっと…石澤香奈さんを呼んでください。茜…左海茜が事故に遭ったそうです」
「わかった。安東美鈴、田宮春、石澤香奈は至急事務所まで」
俺はその間に社長に聞いたことを話、病院に向かった。
病室は面会謝絶で。
頼み込んで入れてもらった。
…………。
やめておけばよかった。
俺を見詰める瞳は閉じられ、頭から出血。
「もしかして…左海さんの彼氏の方ですか?」
「ち……はい」
彼氏と言われても嫌じゃない。否定しないで肯定した。
茜。今日だけ…今日だけはお前の彼氏だから。
「実は、彼女さん。こどもが轢かれそうになったのを助けて…」
「そうですか。優しい奴ですからね。茜は」
「……くすくす」
いきなり笑われた。は?
「本当に彼女さんが好きなんですね」
「………な………」
火が着いたかと思った。
茜が聞いてないことを祈る。
「……………」
茜。茜。茜。
血まみれで白いシーツに埋もれている。
茜。茜。茜。
手を握り、待っていると春達がやってきた。社長も。
「で?左海は?」
「左海は…頭をやっているそうです」
「あーちゃんは…どうして事故に遭ったですか」
「香奈っち…こどもが轢かれそうになったのを助けたんだってさ」
「馬鹿だな…こども助けて自分が轢かれるなんて」
春の言葉に、ぶちっと来る。
「あんたにはわからないだろうけど、普通の人間なら助けるだろうね。特に……茜なんか優しいから」
美鈴の言葉に、春が慌てる。
元カノだって言ってたっけ。まだ好きみたいだな。もう、オレには関係ないけど。
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