事故

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「左海は、暫く動けないか。仕方ないな。……久御山、お前!お前の方が死にそうな顔してるぞ」 「……え?」 社長に言われて、血の気が全く失くなってることに気がついた。 「…くみっち…もしかして…」 「……あ……いや……その…」 困った。 きゅっ。 いきなり手が握られ、驚く。 「あーちゃん!」 香奈が言う。 茜がうっすらと…目を開けていた。 「…茜!大丈夫か!」 「………は……る……みす…ず」 「…大丈夫か?」 二人が手を握る。 「うん…頭…痛いけどね」 「そっか…」 美鈴が悲しそうに呟く。 「茜、茜」 「りょうすけ?」 「!?そうだよ」 名前で呼ばれて、少し嬉しくて。 「あーちゃん!あたしだよ」 「かなかな…」 「茜…」 また呼ぶ。すると、少し悲しそうに笑う。 「左海さん。彼氏さん、早く来てくれたんですよ」 看護師の言葉に、茜がはてなを浮かべる。 「彼氏?」 「あら、左海さん。忘れたんですか?この方、彼氏でしょ」 オレの肩に手をやりながら笑う看護師。 茜が悲しそうに笑った。 「そうだね。忘れてた…。ありがとう。…亮佑」 「いや、大丈夫か?茜」 「さぁさ、ここは二人きりにしてあげましょう」 皆が出て行き。 二人きりになると茜が…泣いた。 「ごめん…彼氏なんかにされて」 「あ、いや……平気」 「でも…ごめん」 「いや、平気」 「でも…」 茜が泣くから言った。 「嫌じゃネェよ。彼氏に間違われるの」 「でも、春が好きなんだろ?」 「は?」 茜?なんで? 今は春が嫌いだ。なんか…嫌だから。 「いや、違うけど」 「………あたし知ってるよ」 ついっと俺の社員証を胸ポケットから抜き取る。 その裏には…カメラ目線で笑う春と…偶然写った茜の写真。 「ほら、春の写真」 「あ…」 前に挟んだまま忘れていた。 茜は笑った。 「あか「面会時間終りですよ」」 看護師に部屋を追い出された。 俺は…勘違いされたまま…家に帰った。
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