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ゆっくりと、体を起こす子供の目の色は綺麗な紅(アカ)だった。
「…誰?あんた。」
口からは牙が覗く。
やせ細った腕を上に伸ばし、欠伸をした。
「さっきの鳴き声はお前か?」
「鳴き声?鳴いてなんかいないし、この密封された部屋じゃ外に声が漏れることがあるの?」
薄暗い。
流石にこの暗闇では相手が素早く動けば、一瞬で胴体と首が離れてしまうだろう。
「先程のは狼の鳴き声だった。だが、森の中には鳥すら居なかった。お前しか有り得ないんじゃないの?」
子供の大きな黒い耳、黒い尻尾。覗く牙。
大きな瞳は紅に光り輝いている。
普通の子供ではないことなど初めからわかっていた。
「俺が人狼-ジンロウ-だから?そう言いたいの?ハッキリ言えばいいじゃない。」
子供は手を舐め始めた。
「早く出てかないと、
殺すよ?」
シュッ-----
!!!!!
ガッ
素早く後ずさったのは正解だった。
子供の長く鋭く変化した爪は、俺を裂くハズだったようで
先程まで俺の立っていたところに爪が刺さった。
「人間なんか大嫌いだ!さっさと出てけよ!!」
ビィインッ
鎖に繋がれた手足は最長のところで絡まり、こけてしまった。
叫んで俺を追い出そうとする。
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