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「そうじゃ、誠。日暮れまでまだ時間があるき。それまでわしが甘味所で団子でも奢っちゅう。」
そう言うと、彼は有無を言わさず自分の腕を掴み、引きずりながら野原を後にした。
しばらく歩くと、町のような場所に。
…まるで時代村のような、景色。
電信柱も一つも立っていない。
車も自転車も
普通見渡せば一つくらいあるはずの、高いビルの姿も
何も、無かった。
通り過ぎる人々は、みんな着物で
それが幸あって剣道着姿の自分を目立たせなくしたけれど。
…何だか、不思議。
本当に自分は今、平成の時代にいるのかと思ってしまう。
ふと遠くを見れば連なる山々がそびえ立ち、空は相変わらず雲一つない快晴を保っていた。
龍馬に連れられて誠がやってきたのは、そんな町中にある小さな団子屋だった。
赤い布の敷物を長椅子の上にひき、和紙で作られた傘が、日の光を遮ってくれている。
「本格的だなぁ…。」
誠はそんな和風なお店に、ただただ感心するばかりだった。
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