坂本 龍馬

4/12
1063人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
「そうじゃ、誠。日暮れまでまだ時間があるき。それまでわしが甘味所で団子でも奢っちゅう。」 そう言うと、彼は有無を言わさず自分の腕を掴み、引きずりながら野原を後にした。 しばらく歩くと、町のような場所に。 …まるで時代村のような、景色。 電信柱も一つも立っていない。 車も自転車も 普通見渡せば一つくらいあるはずの、高いビルの姿も 何も、無かった。 通り過ぎる人々は、みんな着物で それが幸あって剣道着姿の自分を目立たせなくしたけれど。 …何だか、不思議。 本当に自分は今、平成の時代にいるのかと思ってしまう。 ふと遠くを見れば連なる山々がそびえ立ち、空は相変わらず雲一つない快晴を保っていた。 龍馬に連れられて誠がやってきたのは、そんな町中にある小さな団子屋だった。 赤い布の敷物を長椅子の上にひき、和紙で作られた傘が、日の光を遮ってくれている。 「本格的だなぁ…。」 誠はそんな和風なお店に、ただただ感心するばかりだった。 .
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!