距離

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辞めるなら、次の仕事見つけてからにして欲しかった。 車のローンも保険も払わなくてはいけないはずなのに。 一哉の考えが甘いようにしか思えなかった。 一哉は付き合い当初から私を困らせてばかりだ。 付き合い始めの最初の2ヶ月間、私は一哉の浮気相手だった。 二股だ。 彼女から電話はかかってくるわ、嫌がらせメールは来るはで毎日が憂鬱だった。 一哉が私を選んだ時も、『死ぬ』だの『リストカットした』だのと言い、一哉もいちいち心配して彼女の所に行くものだから、全然話がまとまらなかった。 時には殴り合いのケンカまでした。 彼女と別れた後も、違う女の子と遊んだり、私の友達のアドレスを勝手にケータイから抜き取り、会っていたり、本当に一哉には振り回された。 普通付き合い始めの2ヶ月間って一番幸せで、なんでも許せちゃうような間柄ではないだろうか。 私と一哉の2ヶ月間は毎日修羅場だった。 だから全ての問題が解決した後は、熟年夫婦みたいになってしまった。 セックスも、もうほとんどなかった。 お互いにそれでも不満はなかったが、 しかし、考えなしの今日のこの行動は、私と一哉との間に距離を感じさせた。 最近は一哉と居ても松井さんのことばかり考えている。 松井さんという存在が私と一哉の距離を一層広くさせる。 なにもかもを松井さんと比べ、彼を基準で考えてしまう。 一哉に対する感情が明らかに変わっていくのを気付き始めていた。
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