第一章

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とある午後の公園。中央には直径五メートル程の噴水があり、四方八方に伸びる水が絶え間なく吹き出ている。離れてはいるが噴水に向かってベンチが四つある。一つはグレイのスーツを着た男がサンドイッチを食べながらボーっと噴水を眺めている。一つは黙々と読書をする眼鏡を掛けた白髪の女性。一つは空いていて、四つ目は静かな公園には似合わない賑やかなカップルが座っていた。 「ねぇねっ優子ちゃぁん、今晩はお暇なんでしょ?」 「んとねぇ、今日は友達とディナーに行く約束してるから、ダァメ」 「いいじゃないそれは今度でぇ。俺がさ、天国までご案内しちゃうからさ」 肩に手を掛けたと同時にジャケットの右胸ポケットがブルブルと振るえた。取り出して見てみると携帯のサブディスプレイには‘次元’と表示されている。 「あ、ちょっとゴメン」 そう言ってルパンは優子から少し離れて背を向けた。 「なんだよ次元。今大事なトコなんだぜぇ、邪魔すんなよ」 ルパンは優子に聞かれないようにヒソヒソ話す。 「なんだとは挨拶だな。そっちはどうせクダラン女でも口説いてるんだろう。こっちはお前の面子の為にわざわざ電話してやってるんだ」 「くだらんなんて言うこたないだろ。今ね、そこでOLの優子ちゃんってかわいい子に…」 ルパンは優子の方に振り返ったが彼女は消えていた。 「・・・・」 「どうしたルパン」 「逃げちゃった」 「ハッハッハ。残念だったな」 そいつはいいと次元は笑う。 「ったくぅ。そんでさっき言ってたメンツってのはどういう事だ?」 「あぁ。それがな…いや、一度アジトに戻ってくれ。その方が早い」 「ふ~ん。なら今から帰る」 ルパンは優子に逃げられた事を惜しみながらも携帯を閉じポケットにしまった。
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