第一章

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「お前に電話する五分ぐらい前にな、ドアからコトンと音が聞こえてきたんだ。すぐに俺はドアを開けて外を確認したんだが誰もいなくてよ。それでポストを見てみたらこれが入ってたんだ」 次元は透明なケースに入ったCD-ROMをテーブルに出した。 「なんだこれは。味気も何もないCD-ROMだなぁ」 「あぁ。まぁ見てくれ」 ルパンはテレビが置いてあるラックの下のDVDデッキに入れて再生を押した。 すると画面にはクリーム色の一人掛けソファーが写し出された。この映像を録っているカメラからは三メートル程離れているだろうか。その後ろには観葉植物があり、ソファー分空け右側には間接照明がある。カーテンがその後ろに閉まっているが部屋は十分明るく、間接照明は点いていない。  五秒ほど静止状態が続くと右から何者かが歩いてきた。こちら側を一目しソファーに腰を下ろした。どうやら男らしい。その男はシルクハットにスーツを着ているがどちらも真っ白だ。中は青のシャツに薄紫のネクタイ。右の目にはモノクルを付けている。 「何だ?コイツぁ。どう見たってじっちゃまの格好をパクってる様にしか見えねぇぞ」 「色は白だがな」 次元がそう言うと画面の男はしゃべり始めた。 「突然このような挨拶、失礼します。初めまして、僕の名前はキッドと申します。と言うより呼ばれていると言ったほうが正しいかな。一度は怪盗キッドという名を耳にした事があるのでは? それでは本題に入りますが、今回挨拶させてもらったのは他でもありません。あなたと勝負がしたいからです。どちらが先に盗めるか、を。そして何をターゲットにするかですが、今東都美術館ではハワイ展が開催されています。その展覧会の目玉品である『大王の涙』がターゲットです。そして日時ですが今日から三日後の午後九時がスタートとします。でもこの美術館ではすぐに盗めないようになっていますので気を付けてください。それではあなたとの勝負を心よりお待ちしております」
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