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「おらー! いつまでも私語をするなよ! 3年1組、名簿順に2列に並べー!」
青いジャージを来た教師が出席簿を掲げ、体育館の一角で声高に号令をかける。
「先生! 男子が、若干女子より多いです!」
「はいはい。遊んでないで点呼取るからなー。1番、阿倍純也」
「はい!」
体育館には、上級生が新入生の歓迎の準備を進めていた。
式典は厳かな雰囲気で執り行うのが常だが、御桜高校では新入生を華々しく迎えたのち、始業式が開かれることになっている。
チューニングの最中の吹奏楽部の後ろをこっそりと通って、健太と春奈が3年1組の集合場所へと到着した。
「5番、大池健太。……大池?」
「はい、はい!」
「おお、新学期早々遅刻かと思いきや、ちゃんと来てるな。次、6番、大友保」
健太は息を整えてから、席に腰を下ろす。
「おう、ギリセーフだな」
「おおロン毛。おはよー」
健太が挨拶したのはクラスメートの宮本広樹、通称ロン毛。
肩まで届く明るめの茶髪に整った顔立ちをした、線の細い長身の男子生徒だ。
「今日は昇と一緒じゃねーのか?」
「昇は……まあ、いろいろあってだな……」
「高槻! 高槻! ……珍しいな。高槻は遅刻か? それとも神隠しにでもあったのか?」
担任教師が珍妙な面持ちで辺りを見回すと、それに気づいた健太が手を挙げる。
「あっ、先生! 昇は遅れて来るそうです!」
「そうか、残念だ。今年も頑張れば皆勤だったのにな」
無情にも、出席簿の高槻昇の名前の横にはバツ印が書かれてしまった。
しばらくすると、生徒会の役員がステージに上がり、開式の合図をする。
「新入生入場。在校生は大きな拍手をお願いします!」
クラッカーの乾いた音が鳴り響くと、体育館の入り口から在校生の花道を通って、ぞろぞろと新入生が入場し始めた。
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