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御桜高校への坂道を下ると、新しい家の立ち並ぶ住宅街、市の人口過剰を緩和するために開発されたニュータウンにたどり着く。
健太と昇は、デパート地下のゲームセンターへ向かうために街を目指していた。
「なぁ昇、近道しようぜ」
「やめとけ健太。この辺昼間は古谷高校のやつらがカツアゲしによく出てくるんだぞ」
「狭い道に大勢で待ち伏せしてんだっけか。汚いやつらだな。まぁ男ふたりがカツアゲされることもないだろ」
ふたりが家と家の間の蛇行した道を早足で抜けていく途中、昇がふと行き止まりの先にいくつかの人影を見つける。
「やれやれ、あいつら古高のやつらだな。間違っても絡んだりするなよ」
「誰が! ……と、わりぃ昇」
健太はその場で鞄を離すと、スタスタと歩き始めた。
その先には――
「お前! あれ古高の連中だぞ! 言ってる側から――」
「よく見ろ昇! その古高のヤローが囲んでるやつ」
「あれは……結城さん!?」
「オラァ! だぁから金出しゃ帰してやるっつってんだろが!」
「やめて……下さい……あぅっ!」
「大人しく言うこと聞いとけや。悪いようにはしねえからよォ」
裾の擦り切れた制服を着た、いかにもという風体をした不良が、人通りのない路上で少女を恐喝しているようだ。
御桜市には民家が入り組んで建てられている場所が多く、不良が悪さをするには丁度いい造りになっている。
「よく見ろ、これ御桜高の制服だぞ! 高校生じゃん!」
「これで3年だってよ! どんだけぇ~!」
やがて、ひとりの男が少女の鞄を強引に取り上げる。
「あっ! 返して下さい! 返して!」
「だから……さっきからうるせえって言ってんだろうが!」
男が少女の胸ぐらを掴む。
「もっぺんうるせえ声出してみろ……そしたら――」
「どうなるんだ?」
「誰だテメ、ぶっ!!」
ひとりの不良が声に反応し振り向くと、その顔面に健太の拳がめり込んだ。
「テっちゃん!」
少女から引き剥がされた不良はそのまま倒れ込む勢いで、コンクリートに後頭部を打ちつけ気絶してしまった。
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