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「……着いたな」
「はい。ありがとうございます」
「ここが結城の家か?」
「はい」
健太と亜由は、住宅街の真ん中に建てられている、巨大なお屋敷の前に立っていた。
「でかいな」
「はい」
「門から家まで、何メートルだ?」
「50メートルくらいです」
煌びやかな装飾の施された家門の先には、奇麗に舗装された道と、青々と生い茂るグリーンが広がっている。
「……だめだ、なんか眩暈がしてきたから、俺もう帰るわ」
「そんな! お構いもしないで……」
「だから気にしなくていいって! それに俺、この後すぐ帰らなきゃいけないし。じゃな!」
言い終わるや否や、健太は元来た道を駆け足で引き返して行った。
「健太さん……」
「おう亜由、今帰ったか!」
健太の後姿をいつまでも眺めている亜由の頭上から、甲高い少年の声が響く。
「バルドー! もう、びっくりしたなぁ」
声の主は、背の高い家門の上で胡坐をかいていた。
その容姿は、あちこちにベルトがあしらわれた黒い服を着、頭には短絡的な角、背中には鳥とも蝙蝠のそれとも見える羽が生えている。
「なんだよ今のやつ、ひょっとして、お前のこれか」
まるでハロウィンの仮装のような装いをした少年が、亜由に向けて小指を立てる。
「ち……違うよもうっ! 変なこと言わないで! それより今日は大変だったんだから」
「どうやらゲームの始まりが近いせいか、近所のアホ共も喧嘩っ早くなってるみたいだな。でもよぉ、これからもっと大変なことが起きるぜ。ククククク……」
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