-第1章- 小さな魔法使い

21/32
前へ
/688ページ
次へ
「本当に、動物がお好きなんですね」 「はい。すみません、いつもお邪魔してしまって」 街の一角にある一軒のペットショップ。 そこには、子犬を抱きかかえて店内の動物を見てまわっている水無瀬春奈の姿があった。 「…………」 「あんた、こんなところで何してんのよう」 「のわああっ!! またお前か!」 無言のまま、店の外から春奈を見つめる健太の背後から、神出鬼没なクラスメートの山田真が声を掛けた。 「傍から見たらストーカーよ! 気持ち悪い」 「違っ、俺もちょうど中に入ろうかなーと思ってただけだ!」 そう吐き捨てて、健太はずかずかとペットショップに入って行った。 「……たく、素直じゃないねぇ」 店の入り口に付けられた鐘が、カラコロと音を立てる。 「いらっしゃいませ」 店員が客に挨拶するのが聞こえ、店内にいた少女が何気なく振り返った。 「健太くん?」 「よっ! 奇遇だな」 「うん! あ、ちょっと待ってね。……よいしょ」 春奈は子犬をケージの中にそっと降ろす。 「またね、アリスちゃん」 そう犬に囁いてから、そばにあった椅子に腰掛けた。 「アリス? この犬の名前か?」 「うん。可愛いでしょー?」 (まだ小さいとは言え、ブルドッグにそんな名前つけるなんて、春奈もちょっと変わってるよな……) 健太は苦笑すると、足下に鞄を置いてから椅子の背を引く。 「隣、いいか?」 「うん」 少し照れくさそうにしながら、健太も春奈の隣に座った。
/688ページ

最初のコメントを投稿しよう!

513人が本棚に入れています
本棚に追加