-第1章- 小さな魔法使い

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「じゃあ、私こっちだから」 「おう、また明日な!」 バイバイと大きく手を振って、春奈は雑踏の中に消えていった。 「なんだ。最後の最後でいいことあったじゃん」 「……それはどうかな?」 「またか……何処だ! 俺に話し掛けるのは一体誰なんだ!」 健太は声の聞こえた後ろを振り向くが、そこには誰もいなかった。 「やっぱり、幻聴なのか……?」 「どこを見ている?」 「!」 健太の耳には、確かに今、低い男の声が聞き取れた。 「私はここだ……」 健太が振り返った先に立っている電柱に貼られた『迷子犬、探しています』というポスター。 そこに描かれた犬の絵の口が、動いた。 「うわあああっ!」 健太が後ずさった矢先、今度は真横の郵便ポストに繋がれた柴犬が人語を話す。 「いつまでもたもたしている……早く私の力を継げ……」 「お前の掛け替えのないものを失ってからでは、もう遅い……」 「誰だ……誰なんだよお前…… ? 止めろ、話しかけるな! 俺に、俺に話しかけるなあああっ!!」 健太は走り出した。 道行く人々をすり抜け、押しのけ、突き飛ばし、がむしゃらに走った。 時折、先の声が聞こえる気もした。 気もしたが、それでも走った。 目指すのは、自分の家――
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