-第1章- 小さな魔法使い

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「――という訳で、何とか持って来てやったんだから、ありがたく食えよ!」 母特製の炒飯を持って、書斎に帰って来た健太。 それを見て、『魔術師』と名乗った怪しい少女は目を丸くした。 「なにそれ、なんてパン?」 「パンじゃなくてチャーハン! ……ひょっとしてお前、炒飯知らないのか?」 「知らない。始めて見た」 今度は健太がキョトンとした表情で少女を見つめる。 「そっか。確かによく見ると、お前外国人だよな。しかもアジア系には見えないし……。まあいいや、食ってみろよ。スプーンの使い方くらいわかるだろ?」 少女はコクンと頷くと、慣れない仕草でスプーンを掴み、日向子の労作を口に運ぶ。 「……どうだ?」 「……おいひい」 「え?」 「美味しい、何この料理! すっごく美味しい!」 「そうかそうか! よっしゃ!」 「いや話の流れからして、別にあんたが作った訳じゃないでしょ」 「ぐふん……! 作ったのは俺の母さんだよ」 皿一杯に盛られた炒飯をスプーンでかき込み、少女はあっという間に平らげてしまった。 「はうー。ごちそうさま。ねぇ、これってこの国の料理?」 「いや、お隣りの中国だが?」 「ほっほう、これが噂に聞くチャイニーズか……」 舐めまわすような視線で食器を見つめる少女から皿を取り上げ、健太は少女に訊ねる。 「お前やっぱり西洋の方に長い間居たんだろう」 「うん。確か1908年まで。アルカナスゲームが始まってからの400年は、ずっとイギリスとかおフランスあたりにいたよ」 「……はい?」 「だーかーらー! それくらい長い間、世界の西側でしかアルカナスゲームは起こらなかったの! ええーっと、ここ、日本? とにかく、世界の東側、それもこんな島国でゲームが始められるのは、今回が初めてってことよ。どぅーゆーあんだーすたん?」 「もしかしてお前……人間じゃないのか?」 「ええ。もともとは人間だったんだろうけど、今は違う。信じられないのも無理はないかも知れないけどね」 嘘だろ、そう言おうとした健太は、ようやくあることに気づく。 椅子から立ち上がった少女を見て、確信した。 「影が……ない」
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