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窓から部屋に差し込むオレンジの斜陽は、ソファと本棚、そして健太の影を床に映し出している。
しかし、少女の足元から伸びるはずの影はない。
「そこの本棚、見てて」
健太が少女に指さされた本棚に目をやる。
「なんだ、あれ……」
本棚から伸びる影から、ゆっくりと人影が這い上がってきた。
「恐がらなくていいよ。あれはあたしの影」
ちょうど少女と同じ姿を模った影は、本棚から1冊の本を取り出す。
それを手に取ったまま影は少女まで歩み寄り、それを少女に手渡した。
「ご苦労様」
少女がそう言うと、影は溶けていくように少女の足元に吸い込まれ、気がつくと少女の足元からは、影が本来あるべき形で伸びている。
「ふん、これで信じてもらえたでしょう?」
「……本当、なんだな」
少女は椅子に踏ん反り返るようにして座ると、そのまま話を続ける。
「まずはあたしが何者か、だっけ。あたしはアルカナスと呼ばれる、簡単に言えば神様の召使いみたいなもんね」
「神様?」
「そ。アルカナスは全部で11人と11つの神の御使い。基本的には神様が世界を管理する手伝いをするのかな」
「……」
「で、次にあたしはどっから来ただっけ? 答えは空から。おしまい。ハイ次」
「ちょっと待て! そんなん納得できるか。ちゃんと説明しろ」
「面倒なことは後でいいでしょ。あと、あたしが着ているコートはこの部屋で見つけたの。なんかこの国って、思ったより寒かったから。そんでここがあんたの特等席て、そんなん知らないわよ」
快刀乱麻を断つが如き勢いで、少女は先に投げかけられた健太の質問を両断していく。
「ぐっ、最後に、ここに来た理由だけど、ここまで端折った分納得がいくように説明しろよ」
不敵な笑みを浮かべると、少女はその場を立ち上がって言い放った。
「単刀直入に言うわ。今、あたしたちアルカナスによるゲームが、この街で始まろうとしている。あんたにも参加してもらうから、あたしとペアを組みなさい。拒否権はなし。以上!」
「……ゲーム? なんのレクリエーションだよ」
「そんな気軽なもんじゃないわ。むしろサバイバル。バカな悪魔が企画して、アホな神様が取り仕切る、殺し合いゲームよ!」
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