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健太も歩み寄ると、少女の頭をわしゃわしゃと掻きまわした。
「だが、こーとーわーるー!」
「なっ、何すんのよう!」
「そーんな胡散臭い話が信じられるか!」
「あんた! さっきと言ってることが違うじゃない! 今日散々あんびりーばぶるな目に会ったでしょ? それともあたしの言ってることが――」
「手の込んだ悪戯だろ? 後は幻覚幻聴! ほら、飯も食ったんだから、もう帰った帰った!」
健太は少女の手を掴むと家の外に連れ出すべく、少女をずるずると書斎から引きずり出した。
「はーなーせー!」
どたどたと玄関に向かって足音を立てる健太に、日向子が気づいて声を掛ける。
「あら健太、何してんの?」
「何って、ほら! こいつ……あれ?」
健太は少女の手を掴んでいたはずだった。
しかし、後ろを振り向くと、そこに少女の姿はない。
「おかしいな? 確かに……」
「もう、遊んでないで、少しはお母さんの手伝いもして頂戴! あ、もうお風呂沸いてるから、先に入ってきなさいね!」
「あ、ああ……」
狐にでも化かされたのかと言われんばかりの顔をして、健太は日向子に気の抜けた返事をする。
(さっきのも幻覚だったのか……俺、疲れてるのかな)
この日の健太はすぐに入浴を済ませると、食器洗いをした後、早めに床についた。
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