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「危ねー! 朝からヤバイやつに絡んじまった」
小走りで住宅街を抜け、学校まで続く坂道に辿り着く。
さすがの健太も坂まで走って登り切る力までは残っていなかったので、てくてくと歩いて坂道を歩いて登ることにした。
「今日は変な時間に寝たせいか、朝寝坊してメシ食ってこれなかったんだよな。途中でコンビニにでも……」
一旦立ち止まってから、健太はポケットから財布を出して中身を見、そして溜め息。
「今日は我慢しよう……」
やがて、坂道を半ば程まで登ったところで、見覚えのある少女の後ろ姿に出会った。
「あれ、もしかして亜由か?」
「健太さん! おはようございます」
ぺこりとお辞儀するのは、3年2組の女子生徒の結城亜由。
「お前、いつもこんな時間に登校してたっけ?」
「いえ、昨日はちょっと夜更かししてて、それで今日は寝坊しちゃったんです」
「亜由も夜中まで頑張って勉強してたんだなー。関心関心」
うんうんと頷く健太に、困った顔をして亜由が付け足す。
「違うんです。実は今、うちに厄介な居候の子がいて、その子が毎晩、タロットでゲームしようって誘ってくるんです。ちょっとくらい相手してあげないとすぐ拗ねちゃうから」
「ふーん。なんか大変なのな。それよりそろそろ急いだ方がよくね? もうすぐ予鈴鳴っちゃうぜ?」
「そうですね。……っ」
踵を押さえてしゃがむ亜由。
それに気づいた健太はその場で膝を折り、亜由に背中を向けて言った。
「まだ少し痛むのか。また負ぶってやるよ」
「そんな、悪いです」
「いいっていいって。ほら。その代わり、俺の鞄持っててくれよ」
「……すみません」
予鈴が鳴る頃にはふたりとも学校に入り、亜由を隣りの教室に見送った後、健太も自分の教室へと向かう。
「はい、俺も到着」
本鈴が鳴り終わった時には、どうにか健太も自分の席に座ることができた。
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