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春らしい陽気が訪れ、桜の芽吹く時期となり早何日か。
日本中の学び舎で、今日から新学期が始まろうとしている。
朝の8時を過ぎた頃、御桜高校へと続く坂道は生徒たちの雑踏にあふれていた。
期待と不安に心を躍らせながら登校する新入生。
久々の面子に会える嬉しさからか気持の高揚を抑えきれず、学校までの傾斜のきつい坂道を一気に駆け上がる在校生。
「やれやれー、朝から皆さんお元気なこって」
弾むように校舎に吸い込まれていく下級生を、グラウンドのフェンスに寄りかかりながら見送るひとりの少年の姿があった。
御桜高校3年1組、大池健太。
一見、中学生と見紛いそうな小柄な体格をしている17歳。
しかし、反抗期の少年のようなつんつん頭にボロボロの裾にボタン全開のブレザーという格好は、さながら不良少年といった感じだった。
「……お前、しばらく見ない間に老けたんじゃないか?」
「なんだ昇、いたのかよ」
ノボルと呼ばれたのは、健太のクラスメートである高槻昇だ。
まだあどけなさが残る健太とは対照的に整った顔立ちをし、背丈は健太より少し高く、平均的な高校3年生くらいか。
奇麗に着こなされている制服は皺一つないく、完璧主義者で少々頭が硬いところもあるが、穏やかで品行方正といった感じの人物であった。
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