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そして、死が身近な存在である以上、いかに無知と化した人間であっても、「それ」は常識の範疇にあり、ニアもその例外では無かった。
普通の人間であれば、受け入れるのだろう。
しかし、ニアにはそれが難かった。否。難しくなってしまったのだ。
「――ゾイド先生!」
なんとか、助かる方法もしくは延命の方法を聞こうとしたニアだったが、口をつむんだ。
無理だ。
誰もが死ぬ。
例外は無いのだ。
その様子を見て、ゾイドはマナの頬に手をやった。
「ごらんなさい。赤い斑点が浮き出ているでしょう。これが初期症状です。
この斑点が消える頃には痛みや熱が無くなります。
しかし逆に意識が朦朧としてきはじめ次第に呼吸が浅くなります。
そして、発症およそ一か月後、眠る様にして呼吸が停止します。」
知っていた。
ニアは知っていた。幾人も同じ症状を見てきたのだから。
(でも――…!)
ニアは何もしゃべらなかった。
今、目の前に寝ている少年は地上にいかなければならないのだ。などと誰が言えよう。
聞けば人は笑うだろう。
愚かだと言うだろう。
今、それを笑われたら、あまりにマナが哀れなような気がして、ニアはだまって少年を見続けていた。
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