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「また、来るね。」と言って互いに笑顔を交わし、病室から出て十数歩ほど歩くと、ニアは一目散に駆け出した。
ゾイドがすれ違いざまに何やら声をかけてきたが流れる風にかき消された。
ニアは走った。
走れるだけ走ろうと思った。
自分の中のやりきれない想いを忘れる位、
走って、
走って、
走って…
気がついたら、知らず木漏れ日の場所に仰向けに倒れこんでいた。
それでもニアの身体は想いをかき消すまでは付き合ってはくれなかった。
息を切らしながら、手ににぎられている袋に目をやる。
(マナはこの種をどんな気持ちで私にくれたのかしら)
と考えると縁起でも無い事が次々思い起こされてきてしまう。
(――まさか、自殺なんてしないよね…)
なにしろ、生きる希望を絶たれたにも等しいのだ。
「馬鹿。
そんな訳は無いよ。」
(自殺を考える人間があんなに楽しそうに笑えないよ。)
でも――!
「ああ、あたし達の人生って本当にちっぽけだ。」
例え、夢を抱いてもそれを叶えるだけの時間が無いのだ。もっと長生きだった昔の人はことごとく夢を叶えられたに違いないのに。――
ニアは立ち上がると種の入った袋をポケットにしまいこみ、家に帰っていった。
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