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ニアは灰色のソファに腰をおろし、ほー、と溜め息をついた。 暖炉に火が焚かれ、ようやく一息という具合。 「それにしても…」 思ったより早く家に着いたことに安心した。 随分、ながい時間あるいて、とても遠い所まで行っていたつもりだったのに案外ちかい場所だったことにまた驚きを覚えた。 ニアは、ほとんど家から出る事がないので近所のことも良く知らなかったのである。 ホットミルクをすすって、また、ほー、と溜め息をつくと、膝の上にニーナが座った。 ニーナは猫の名前である。 ニアは古い借家に猫と住んでいた。 ニーナはニアが生まれる前から生きているから、ニアにはニーナが何歳なのか分からなかった。 しかし、これに限らず、この時代の人はペットの歳をほとんど分かっていない。 ペットの方が人間より長生きする確率が高いからである。 だからニーナもニアに飼われる前は別の名前で呼ばれていたに違いない。 ニーナという名前にしたのは、そう呼ぶほうが振り向く確率が高いからであった。 しかし、今日はいくら呼んでも見向きもしてくれない。 「ニーナ。一日中ひとりぼっちにさせてごめんね。」 「ニーナ。今日は不思議な道を進んだら不思議な場所に出て、不思議な男の子に会ったんだよ。」 「ねえニーナ。そういえばニーナとは今まで一緒に外にでたことがなかったね。」 「そうだ!明日一緒にその場所に行ってみようか!?」 ニーナは 相変わらず黙して欠伸をするだけだった。
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